Exhibition

エキシビション

音の幽霊 Ghosts of Sound

概要

二つの機構を持つ再生装置を使用したサウンドインスタレーション。
かつてその環境で鳴らされたであろう音を音楽的に再現することで場所の記憶を蘇らせる。

誰もいない木造古民家に潜む"音の幽霊"。
かつて誰かが鳴らした音、
風や木々、
虫や動物、
または家そのものが鳴らした音たちが、
場所の記憶となり生き続け、
ヴァイオリン弾きの妄想的な即興演奏と響きあう。

解説

即興演奏を行う際、その周囲の環境に存在する音を意識して調和するように演奏する。
こうしたアプローチは演奏者と環境の間にある境を曖昧にし、音楽を拡張すると考えるからだ。
その時、実際に音楽家本人が奏でる音だけでなく、周囲の環境音や偶発的に鳴らされるアクシデント音さえも音楽の一部となる。

同様の考え方で逆方向からのアプローチを試みたのが“音の幽霊”である。
会場となる古民家のある街、京島から発掘された古いレコードプレイヤーをベースに作られたこの再生装置は二つの機構を持つ。
一つは録音された音源を再生するスピーカーとしての機構。
ここには環境音と調和するように行われた即興演奏と、サンプリング音をミックスした音源を制作した。
サンプリングには台所の家事の音、トイレの音、引き戸の開閉など実際に人間が行わなければ発生することのない生活音を、演奏は本人のアルバム『妄想公園』から選曲した。

もう一つは実際に回転して、物理的に周囲のものと接触することで打楽器のように自動演奏する機構。
レコードプレイヤーの回転を利用したマレット側にはボタンやボビン、木片、庭の植物を、周囲に配置され演奏される楽器側には実際にその場で使用されていた食器や調理器具、トタンなどを選んだ。
装置の回転によって遠心力で加速、接触によって減速を繰り返すことで不規則な再生を実現、いっときとして同じ瞬間の訪れることない展示となった。

装置から鳴らされる音のレイヤーが複数になり音の発生源を不明確にすることで、再生装置は周囲の音との境界も曖昧にしていく。
結果、鑑賞者がレイヤーの中間にいる感覚を体験し装置以外の周囲の音も音楽として認識できるよう配慮した。
作家在廊日となった「音を発掘し配置できる日」には、鑑賞者が展示会場である古民家の生活用品などから物を選び、再生装置の周囲に配置、接触させることで音を再生させ、作品へ参加できるようにした。

かつてこの場所で鳴っていたであろう音が音楽的に再生されることで場所の記憶を蘇らせるような展示を試みた。

出展

(2023)
すみだ向島EXPO2023国際文化交流事業「すみだx台湾アートロビー」
展示会場:ウラダナ
素材:ミクストメディア(当古民家”ウラダナ”で使用されている道具類、京島から出た廃材)

関連イベント

「音を発掘し配置できる日」 2023.10.28 (sat)

作家が在廊し、鑑賞者が作品に参加できる日です。
配置された物に不規則に接触して音を奏でる装置『音の幽霊くん』に音を加えたり、配置された音を移動させたりできます。