3月10日、山形県大石田町。
夕方6時、新しい時報が流れ始めると集まっていた人たちのざわめきが止まった。
みんななんとなく空を見上げてメロディに耳を傾けている。何事もなければ意識することもない時報にたくさんの人が心を寄せる。とても美しい景色。
この瞬間が見られた自分はとても幸せな音楽家だと思う。
昼間の試験放送では役場のみで「冬春夏秋」の4曲をひと回り放送。鳴らし始めたら一羽のカラスが飛んできてラッパスピーカーのまわりをぐるぐる飛んだり、側に止まったり、時折鳴いてくれたり。まるで新しい時報を確認し、戯れるようだった。
それを見て「ああ大丈夫だな」と思った。
このメロディが土地の音、町の音と調和して長く鳴り続けていく様子が思い浮かんだ。鳥はよくそうやって僕に教えてくれる。
この音楽が鳴り続け、大石田町の原風景の一部となっていくのを楽しみに待ちます。
2023.3.11
夕刻のヴァイオリン弾き、山形県大石田町の6時の時報になります。
新作「冬春夏秋」をリリースします。
聴く方法はただ一つ、山形県大石田町で各季節に夕方6時を迎えることです。
既存音楽の起用ではなく時報として町に流れることを完成形として作った楽曲です。
その町、その土地に存在している季節ごとの様々な音と調和し、それが音楽に聴こえるような曲、そして1人のヴァイオリン弾きが実際にどこかで鳴らしているような音を目指しました。
タイトルの「冬春夏秋」は、春を始まりとするのではなく長く深い冬があるという前提の上に土地の四季が巡っているという印象からきています。
最初の『夕刻のヴァイオリン弾き』発表から1年半、「町の時報を作る」という一つの願いが叶うこととなりました。
大石田AIRの大橋武司さんとの二人三脚で一年かけた企画、おそらく日本でも初の試みなのではないでしょうか。
それが東北の雪深い小さな町で起こる奇跡に震えます。
実現に際しては、大橋さんはじめ町役場の皆さん、関係各所の皆さんにご尽力いただきましたことを本当に感謝しております。
施工は3/10、初の時報放送の後には『夕刻のヴァイオリン弾きin大石田』の始まりの場所でもある虹のプラザにて小さなお披露目会も行います。
個人的には、誰が作ったかもわからないけれど土地の人だけは絶対知っている読み人知らずの歌のように、暮らす人々の原風景に当たり前に寄り添う時報として、長く残っていってほしいと願っています。
語りたいことはたくさんありますが、それはいずれまた。
まずは大石田で6時にお会いしましょう。
2023.2.24